第2次大戦下の京都帝大における原子核研究とその占領軍による捜索(2)サイクロトロンの破壊

摘要

第2次大戦直後の占領軍による日本のサイクロトロン破壊は科学史に大きな汚点を残した事 件であった。このうち理研と阪大のサイクロトロンの破壊については多くの記録が公表されてい る。しかし京大のサイクロトロンに関しては、資料が十分でなかったこともあってこれまであま り取り上げられていなかった。ところが20世紀末から21世紀はじめにかけて日米で多くの資 料が発見され、その実態が明らかになるにつれて、大戦直後の日米の当事者達の生々しい行動が 浮き彫りにされ、戦後の原子核研究の出発点の一つとして記録にとどめておくことが必要である と考えられるようになった。そこで最近明るみに出た一次資料を中心にして京大サイクロトロン 破壊の実像に迫りたい。