再資源化へ動き出した使用済み紙おむつ: 起爆剤となるか国交省や環境省の取組み，民間では事業化の動きも

摘要

社会保障制度の破綻や労働力の低下など，高齢化社会の到来により生じる数々の問題のなかで.全国各地の自治体が喫緊の課題として抱えているのが使用済み紙おむつの処理である。一般廃棄物がリサイクル活動の推進などにより減少傾向にあるなか，増加の一途にある使用済み紙おむつ。すでに一般廃棄物全体の1割を越える自治体もあり，水分を多く含む使用済み紙おむつは焼却処理するのに助燃剤が必要となるため数十円/kgの負担増となるうえ，その高溫により炉は傷みやすく設備への負担が増すためである。こうしたなか，その解決策の一手として名乗りをあげたのが国土交通省。下水道を利用した使用済み紙おむつの処理を提案している。だが，そもそも下水設備で紙おむつを処理することなどできるのだろうか。紙おむつにはパルプだけでなくプラスチック成分も多く使用されている。処理しきれなければ，いま世界でクローズァップされている海洋プラスチック問題への取組みに逆行することにもなりかねない。他方，民間企業ではすでに使用済み紙おむつのリサイクル事業がはじまつており，こうした動きを受け環境省は自治体向けのガイドライン作成に乗り出した。使用済み紙おむつを取り巻く昨今の状況についてまとめた。