国際的影響要因で激変した事業環境と今後: 有力企業に聞く不織布業界の課題と展望

摘要

わが国不織布産業の歴史はおおよそ60年になるが，戦後の高度成長期から企業による国際展開の拡大期などを通し，不織布は産業資材あるいは生活資材の有用な基礎素材として利用度を高めていき産業規模を大きくしていった。その後"昭和"から"平成"へと年号が変わり，順調に成長を果たしてきた日本経済もバブル崩壊後の低成長期に入っていったが，不織布は他の素材産業に比べ堅調な推移を辿り，リーマン•ショックも無事に乗り切り成長産業として事業エリアを広げていった。昨年は12年振りに日本で不織布産業の国際展示会ANEX2018が開催され，同種の国際展として過去最高の出展者•入場者を記録して成功裏に終わり，近未来においての可能性にも大きな期待をもたせることとなつた。そして今年，業界団体の日本不織布協会が創立20周年を迎えるなど順風満帆ななかでの"令和"への船出を迎えたと言ってよいが，目を海外へ転じると必ずしも手放しで喜べる事業環境には見えない。本誌は創刊30周年を迎えるが，そうした意味では"平成"とともにスタートした不織布専門誌として，この間の業界動向をつぶさに見てきた立場にある。そこで今回，特別企画として改めて平成年間における有力企業の事業展開総括と今後の成長戦略に焦点をあてるアンケート調査を実施した。文書による回答，直接取材による回答などで，不織布関連23社にご協力いただいた。回答内容は各社各様だが，わが国不織布産業の発展方向を占ううえで貴重な調査結果となつており，今後の業界発展の可能性を確信させるものとも言える。