建築でなく行動を追うことで見えてきた新たな黒川紀章像

摘要

生前の黒川紀章氏には1度も会ったことがなかったという著者が害いた評伝は、親交のあった人に「黒川紀章が降りてきた」と言わしめた。建築だけを見ていては分からない、建築家黒川紀章に迫った労作だ。世間の多くの人がそうであるように、著者の曲沼美恵氏も「黒川さんの名前も顔も知っていたが、逆にいえばそれしか知らなかった」。勝手に怖い人というイメージを持っていて嫌いだったという。黒川氏の建築にも特に興味はなかったが、たまたま「国立新美術館」開館記念の黒川紀章展で、意外なものを目にする。紋付きはかまで刀を持った黒川氏のこわもての写真に、「僕の展覧会に来てくれてありがとう」というせりふの吹き出しが付いていた。「このとき感じたギヤップが黒川さんそのものだった」.