野兎病菌の自然宿主内における増殖と共生機構

摘要

病原体は人や動物に感染後、標的臓器·細胞内で増殖し、破壊することによって最終的には体外へ脱出し、新たな宿主に感染する。この過程で宿主が死に至る場合もある。一方で、病原体が環境中で自らの居場所としている自然宿主に侵入した場合、宿主内での爆発的な増殖は認められず、体内で維持され共生関係が成立すると考えられる。この自然宿主は病原巣となり感受性宿主にとって排除しなければならない脅威となっている。感染症を予防するためには病原巣からの感染ルートを断つことが重要である。しかしながら、病原体の環境中での動態、特に自然宿主との共生メカニズムは不明な点が多い。そこで我々は病原体の感染環を断ち切るために、環境中の自然宿主内における病原体の共生機構を解明し、新たな感染制御法の構築を目指している。本稿では、細胞内寄生菌のーつである野兎病菌Francisellatularensisと自然宿主との関係について最近の知見を紹介する。