ラクトフェリンの生理機能とその応用

摘要

ラクトフェリンは牛乳中の赤色蛋白質として1939年に初めて報告され，1960年に単離，分子量約8万の鉄結合性の糖蛋白質であることが確認された。1980年代に入って牛乳を原料としてウシラクトフェリンを工業的に高純度で生産する技術が開発され，ラクトフェリンの基礎および応用研究が飛躍的に進展した。ラクトフェリンはほとんどの哺乳動物の乳中に含まれており，特に初乳中に高濃度で存在することから，未熟な乳児の発育や感染防御において重要な役割を担う因子であると考えられてきた。一方でラクトフェリンは涙や唾液などの外分泌液中にも含まれており，また生体内で感染による炎症時に好中球が産生して血中に放出することから，成熟した個体においても外部環境からの病原微生物の侵入を防御する因子として機能していると考えられる。