JR女川駅

摘要

2011年3月の東日本大震災直後から，まず避難所で暮らす被災者の家族間のプライバシーを確保するための間仕切りを設置する活動を始め(本誌1105),3カ月余りで，50以上の避難所に1,800ユニットを設置した.この活動は，2004年の中越地震から始めたものである.間仕切りの設置作業と同時に進めていた活動は，住み心地がよく，効率的に多くの戸数が建てられる3階建て仮設住宅の提案である.500km余りに及ぶ沿岸部の被災地では，従来の平屋の仮設住宅を建てるには十分な土地の確保が困難であろうと考え，また，将来の都市部での地震も想定し，多層の仮設住宅の提案を2011年4月中にまとめ，仮設住宅の発注者である，岩手，宮城，福島の3県庁に，海運用コンテナを構造とする3階建仮設住宅建設の業者登録を行った.その後，避難所の間仕切りを設置しに行くたびに，その町の首長に3階建仮設住宅の模型を見せ，図面を配って回った.その中のひとつの町，宮城県女川町の安住宣孝町長（当時）より「女川町はあと189世帯の仮設住宅が必要なのだが，野球場しか残った土地がないので十分な敷地が確保できず困っている」という話を聞いた.そこで，野球場内に189世帯分の2•3階建て仮設住宅と，住民の要望通り家の前の駐車場，集会場，坂本龍一氏寄付によるマルシエ，千住博氏寄付による子ども図書館兼アトリエを建設した(同1112).3階建て仮設住宅は，面積も建設コストも他の一般の仮設住宅と同じ県の基準に従って建てたが，明らかに一般の仮設住宅より住み心地がよく，多くの住人は仮設期間が終わって家賃を払ってでもここに住み続けたいと感想を漏らした.