図面が伝達する建築ヘの眼差し

摘要

僕が東京藝術大学で学生時代を過ごした1960年代はじめは，個々の建 築の設計が教育の中心にありました.その後，計画対象の広がりと共に， コンセプ卜を重視する取り組みも増えていったのですが，われわれの時 代は，先生方も具体的な建築に取り組ませることで設計者を育てるとい う方針で，カリキュラムを組まれていたと思います.藝大では1年生の 最初に建築の設計製図の基本を教えますが，これは今でも変わりませ ん.いろいろな世界の名作住宅のプランのトレースだったり，当時主任 だった吉村順三先生の住宅作品の実施設計図面を夢中でコピーしたりし ました.まだ図面に描き込まれた細かな内容は理解できないのですが， ともかくそういう作業を繰り返す中で，建築図面へのアプローチとか， 設計や設計図とは何なのかということを自分たちなりに類推しながら学 んでいきました。