'Freeing Architecture'石上純也 自由な建築

摘要

2011年に「自由な建築」という論考（本誌1101)を書 いた.多様化する現代の価値観や問題や要求など に対して，それらに適合するような建築のあり方を 考えなければならないと感じていたからである.そ のような無数の建築へのアプローチを実践するため には，既存の型を外し，自由な思考のプロセスが必 要だと思っていた.その頃から時間が経ち，僕の事 務所で進行しているプロジェクトも少しずつ増えてき た.ヨーロッパ，アジア，ロシア，オセアニア，ア メリ力大陸など，プロジェクトの敷地はとてもさまざ まだ.異なる文化や社会，民族性や人間性などに その都度接しながら，それらいろいろな価値観にパ ラレルに，ある驚きと新鮮さを感じつつ建築を考え ている.とても幸せなことである.しかしながら，実はそのような状況は僕に限ったことではなく，現 代の世界中の建築家が置かれている状況が，多か れ少なかれこのような文脈の中にあり，僕もただそ こに取り込まれたということだけのことだ.数年前に 書いた，あの論文のことを思い出し，僕は，そのこ とを強く実感しつつある.