称名寺 鐘撞堂

摘要

広島県呉市阿賀にある称名寺の鐘撞堂の計画である。称名寺は，かって海だったところが埋め立てられ出来た町と，それを取り囲む山の境界にあたる場所にある。寺に向かって長い階段を登っていくと，その先に鐘撞堂が，さらに遠方に海が見えてくるという立地で，鐘を撞くと，まるで海と街に向かって音が響きわたっていくような気持ちのいいところであった。そこでまず，鐘を撞く時に海に向かうよう，配置を決定した。当初私たちは，既存の鐘撞堂を尊重したシンプルな建築を提案してしすこが，ご住職から「もっと多くの方にお寺に興味を持ってもらえるよう，皆がなんだろう？と思うものをつくってほしい」と意見をいただき，対話を重ねて今のかたちへと決まっていった。鐘を吊るす屋根下空間は，既存の石垣を延長した洞窟のような場に，その上に周囲の山並みと呼応した特徴的な屋根がかかっている。せつかく彫刻的な屋根をつくるのであれば，何か面白い方法でつくれないかということで，木材をジェンガのように積み重ね，3次元で削り出す技術を使ってつくることにした.検討にあたっては1/5のモックアップをつくり，実際に小さな鐘も吊るして檀家のみなさまに見ていただき，最終決定となった。