櫸の音terrace

摘要

本計画は，東京都練馬区にあった築38年の鉄骨造2階建てァパートを，職住一体型の賃貸集合住宅へとリノベーションしたものである.昨今の東京圏における働き方•暮らし方の多様化に対するひとつの応答として，近世の町家形式の住まい方にヒントを見出し，「ナリワイx暮らし」をキーコンセプトとした.生活の延長でナリワイを始めることができるように，住居を大きく3つの空間に分け，①玄関先をミセの空間として利用できる「土間」，②生活の場として利用できる「奥の間」,③トイレ•洗面脱衣室•バスルームをまとめた水回りスペースによって構成した.入居希望者とは事前面談を実施することで予めコンセプトを共有し，その結果これから新し<仕事を始める人や兼業したい人，小さな実店舗を設けてお客と触れ合いたい人などさまざまな住人が集まった.建物前面にはデッキテラス.中央部には共用スペースを設けることで，住人が自由に利用できる空間が広がるだけでなく，近隣住民とも繋がれる場となるよう企図している.目の前には小学校,近所には老人ホームがあり，住宅地という立地条件の中でも多世代が交流できる地域のハブとなるよう開かれている.また，設計者自身が竣工後も運営に携わり，地域と繁がるマJレシェゃ入居者との食事会を開催することで，住人と共に継続的にこの場をつくり上げていくよう試みている.住居部分では，より自由度の高い住まい方とするため，部屋ごとに異なる平面•開口部•設えとするだけでなぐ，住人おのおのでDIY可能にすることで.入居者自身が自由に編集できる余白をつくっている.退去後もそのナリワイや暮らしの痕跡を遺すことで，創意工夫が次の住人へ継承される仕組みとした.また，本計画地に隣接して施主の母屋があり，周囲にも施主の所有物件が複数あることから，今後は本計画を起点として，施主が所有する周辺物件を巻き込んで，「ナリワイx暮らし」をテーマとしたけリ間ノヮ」プロジェクトを展開し，エリアリノベーションを試みていく.