ホステル翠京都粋伝庵はなれ

摘要

町家が残る一方，商業ビルや商店街など，歴史とプログラムが混在する賑やかな京都•西陣エリアに建つ，文化サロンに付属するホステル.茶道や陶芸をサロンに学びに来るお弟子さんだけでなく，近隣の通信制大学に通う社会人学生や，海外からの旅行者など，少しゆったり滞在する単身者のための宿泊施設である.1972年の「中銀カプセルタヮービル」（本誌7206)，そして1979年の「カプセル•イン大阪」で，初めて黒川紀章がカプセル式マイクロスペースを実現したが，この時の重点は住まう機能を最小限化し，カプセルを入れ替え可能にすることだった.現在，経済効率からすっかり受け入れられたカプセルホテルだが，複数個のカプセルの間にできる空間に，まだ可能性があるのではないかと考え，ふたつのカプセルが向き合うプランと，3つのカプセルがコの字に組み合わさったプランの2種を採用することにした.上段には階段で上がりたいという要望もあり，2段のカプセルへのアクセスは反対向きにして，4～5カプセルからなるボックスという単位を提案し.水周りボックスを含む4つのボックスを隙間があくよう室内に配置.この配置で生まれたのが，向かい合うカプセルに挟まれたプライべート性の高い場所だ.そもそもは各カプセルへの通路だが.向かい合うカプセルに泊まる2人あるいは3人だけの場所でもあり，これらの人びとの間の関係が近しくなれば，よりプライべート性の高い場所へと意味が変化する.