大倉集古館

摘要

大倉集古館（1927年竣工、地上2階）は、日本最初の私立美術館であり、国の登録有形文化財に指定されている伊東忠太氏設計の建築である。今回の計画では周りに増築されていた部分を撤去し、曳家をはじめとして、地下への収蔵庫等諸室の増築や風除室、避難階段、エレベーター新設などの動線改修を含む、免震化および地下増築を行った。免震建物として、既存建物と新たに増築した地下階を一体とした時刻歴応答解析により大臣認定を取得し、大倉集古館の歴史的な意匠に大きな改変をすることなく、全館を現行基準に適合させている。地下増築部分の全周に設けた免震層は、建物内の人々や展示品の安全確保に加え、室内環境への熱負荷低減の観点からも、数千に及ぶ大倉文化財回の貴重な収蔵品の保護に寄与している。美術館としては改修した地上階の展示室内に、新型の独立型展示ケースを設計し、地下増築部分には既存大倉集古館の意匠とは対照的に、簡潔な意匠によるロビーやショップ、ホール等の公共空間を設けた。