排砂バィパスの運用とダム下流環境

摘要

河川では土砂の堆積と浸食が多様な河床地形と流れを 形成し.ある限られた空間に異なる流れや底質に適応し た水生生物の共存を可能にしている。河道に土砂が不足 しても過剰にあっても,生物多様性や生態系の健全性は 損なわれる。砂利採取やダム等によって河川における土 砂移動が妨げられた結果，日本の特に下流域で河床低下 が起こり環境問題を引き起こしている。一般に河床低 下が起きた河川では，流路と氾濫原の高低差が大きく. 河川縦断方向の河床地形や流れの不均一性が小さく，石 や岩といった粗い河床材料が優占する。ある河川区 間において，流れや底質（河床材料）の空間的不均一性 が低下すると，一部の流れと底質の組み合わせを生息条 件とする水生生物がその区間で棲めなくなる。一方，河 床低下によって増える流れと底質の条件に適応する生物 の侵入と繁殖が促され，その結果，本来の河川には相応 しくない群集が見られるようになる。