基礎地盤の液状化に伴うアースダム堤体の破壊時挙動に関する実験的検討

摘要

わが国では，平成23年（2011年）東日本太平洋沖地震，平成28年（2016年）熊本地震等の大規模地震が頻発している。また，近代的な設計によるダム建設が定着する以前（1960年代以前）に築造されたものも含めると約1,800基の農業用フイルダムが存在する。谷ら1〗によれば，堤高15m以上の農業用フイルダムのうち1960年以前に築造されたダムは1,208基であり，農業用フイルダムの約70%を占めている。このような1960年以前に築造されたダムは，供用開始後50年以上が経過している。築造年代の古いアースダムでは，近代的な設計ゃ液状化に関する科学的な知見に基づかず建設されたものが多く存在し，近代的なフイルダムに比べ不確定な要素が多い。このたや，その耐震性能の照査にあたっては地震時の挙動に関する基礎的な知見の蓄積がより重要であると考えられる。なかでも當農の観点から重要度の高いもの，決壊した場合に甚大なニ次災害を引き起こす危険性が高いものについては，状況に応じて堤体の改修と併せ耐震性を高めるための補強対策が必要になることも想定される。