2021年度日本質量分析学会功労賞

摘要

片木宗弘氏は，在学中のカリキュラムのうちで裁判化学に特に興味を覚え1985年岐阜薬科大学厚生薬学科を卒業後，同年4月に大阪府警察本部刑事部科学捜査研究所に研究員として入所し，同研究所化学研究室で現在まで35年間以上にわたり質量分析装置を用いた鑑定•研究業務に継続して携わってきた.1999年には職場で自らが遭遇した事例に対しGC/MS,LC/MSなど様々な方法論を駆使した結果の握大な成果をまどめ，母校に学位論文「裁判化学における有機リン化合物及びその代謝，分解物の分析に関する研究」を提出し博士(薬学)の学位を取得した.特筆すべきは，上記の応用例として1994年に大阪で発生したオウム真理教による神経剤VXを用いたテロ事件でGC/MSを駆使し，被害者血清から有機リン化合物であるVX代謝物を世界で初めて検出•同定し，VXが使用されたことを立証することに成功した点である.学位取得後，2009年主席研究員，2015年副総括研究員を経て2017年総括研究員となり現在に至る.