超臨界流体染色の特徴と最近の動向

摘要

染色は，古来より水を媒体に染料を繊維に吸尽させることでなされてきた.世界の染色工業では，年間に5.8兆トンもの水を使用し，大量の廃液を排出していると言われている1).5.8兆トンの水は，およそ地中海1.5杯分に相当する.昨今，地球人口の増大に対応する将来的な水不足の問題が取りざたされるようになり，SDGsに代表される持続可能な開発目標の達成において，染色工業に用いる水使用量低減が繊維産業の重要な課題のひとつとなっている.本稿では，近年，実用化が始まり出した無水染色法である超臨界流体染色について，その特徴と最近の動向を紹介する.