64列MDCTによる心筋パーフュージョン(CTP)検査における至適撮影タイミングの検討

摘要

冠動脈CT血管造影(coronary computed tomography angiography: CCTA)は冠動脈狭窄診断における陰性的中率が高いことから一般に広く普及し，臨床応用されている.しかし，CCTAでは冠動脈の石灰化やステントが原因で狭窄度を正確に評価できないことがある.また，中等度狭窄では血流が制限されているかを評価できないため，percutaneous coronary intervention (PCI)の適応決定には生理学的虚血の検出が必要とされている.近年，造影剤をトレーサとみたてて心筋血流を画像化しようとする試みがある.これには造影剤の心筋へのファーストパスを静止画で捉える静的心筋パーフュージョン法（static CT myocardial perfusion: CTP)と，ダイナミックCT撮影データから数学的モデルにより心筋血流の絶対値myocardial blood flow(MBF)を算出すダイナミック法がある.ダイナミック法はdual source MDCT (multi-detector row CT),もしくは320列MDCTなどの最新の機器を使つた報告が多い.当院では2016年から汎用型64列MDCTを用いて冠動脈評価と心筋血流評価を同時に行ってきた.汎用型64列MDCTでは検出器幅が狭く，心臓全体をカバーするためにはヘリカル撮影が必要である.Ichiharaらは汎用型64列MDCTを用いてアデノシンを負荷したィヌに対して，気管分岐レベル上行大動脈（Ao)のダイナミック撮影を行い，それに引き続いてヘリカル心臓CT撮影を行った.ダイナミック撮影と心臓CT画像にAoが描写されている場合はそのCT値を使ってAoの時間濃度曲線(time enhancement curve: TEC)を得た.このTECを入力関数とし，2-コンパートメント法を導入してアデノシン負荷時の心筋血流の絶対値(ml/g/min)を算出した.この算出された心筋血流の絶対値は，心筋血流評価のゴールドスタンダードとされるマイクロスフェア法から算出された心筋血流の絶対値と高い正相関（R~2=0.838)があることを示した.この2-コンパートメント法を用いれば，ヒトにおいても64列MDCTで冠動脈評価と心筋血流評価を同時に行うことが可能と思われる.