埋込型左心補助人工心臓DuraHeart~®

摘要

1957年にクリーブランドクリニックにて阿久津哲三博士が開始した人工心臓への挑戦は，拍動型の塩ビ製ポンプで左右の心室を切除して置換する完全置換型人工心臓(Total Artificial Heart ： TAH)から始まり，いくつかのグループが動物の生存記録を競い合う開発競争が1980年頃まで続いた.TAHの副産物的存在であった，補助人工心臓(Ventricular Assist Device ： VAD)は，自然心を残したまま，並列的，直列的にポンプを追加して送血機能を補助する装置であり，TAHに比し，臨床応用のハードルが低い.このため，臨床実績においてはVADが先行し，1980年代初頭には，TAHが必要な症例は，すべての"long-term out-or-hospital mechanical assistance"を必要とする患者全体の5〜10%程度であるという認識が進み，人工心臓開発の主流は，VADへと移行していた.