気候変動への適応の時代

摘要

2015年12月12日、フランス·パリにて開催されたCOP21 (第21回気候変動枠組条約締約国会議)において、パリ協定が締結された。パリ協定は、産業革命前からの世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える、通称「2℃目標」が定められたことで、大きな注目を浴びた。パリでは、この2℃目標に合わせて、私たち土木の分野にとつて重要な目標が掲げられた。それが「適応策」の推進である。「緩和策」が、たとえば2℃目標のように、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を減らし気候変動の進行を遅らせる対策であるのに対し、「適応策」は、気候変動によつて生じる影響を最小限に抑えるための対策である。パリ協定では、適応策が「すべてのレべル(地方、国家、地域、国際)で直面するグローバルな挑戦であるとの認識」のもと「気候変動に対し、適応能力を拡充し、強靱性を強化し、脆弱性を減少させる」ことが定められ、適応策の推進が規定された。このような世界情勢のもと、日本において適応策に向けた取組みが本格化している。COP21直前の2015年11月には「気候変動の影響への適応計画」が閣議決定され、国土交通省は「国土交通省気候変動適応計画」を立案し、防災や水資源管理、交通といった分野の適応策を示した。他の関係省庁でも適応策の具体化に向けた取組みがすでに始まっている。