国指定重要文化財通潤橋の復旧について

摘要

2016年4月14日(前震)と16日(本震)に発生した熊本地震により、山都町では、通潤橋近傍の観測所(山都町下馬尾)で本震時に最大震度6弱を、震度5強を1度(前震時)、震度5弱を2度記録した。前震後(5強)では、国指定重要文化財である通潤橋では、多数の漏水と橋上の被覆ひふく土に数力所の亀裂が発生した。本震後(6弱)では、被害が悪化し、漏水がさらに甚だしくなり、通水石管材間の目地を充填·接着するための材料である漆喰が通水石管天端上に浮き上がる状況や通水石管接合部の亀裂が確認され、通水石管の多くの部分で漆喰破損が推察された。また、被覆土の亀裂の大きさは、前震後では幅1cm以下であつたが、本震後では亀裂が拡大し、大きいところで幅1～2cm程度で、その深さは最大で約30cmであった。さらに、被害箇所数も増加していた。写真1(a)は通水石管からの橋面上に出た漏水状況と橋面上に発生した亀裂で、写真1(b)はァーチ輪石からの漏水状況を示しており、広範囲に被災している状況が推察された。このままでは通水石管としての利用は困難であり、かつ観光放水も無理な状況となつた。また、写真1(c)は手摺石てすりぃし(橋面上の両端の石材)を含む壁石垣上部の外側への孕はらみが生じた部分(図中の丸部分等)であり、余震等により手すり石の落下の危険性があることから亀裂部位に防水シートを覆う処置をした。