電気事業の法的分離のリスクと対応

摘要

電力自由化とは，送配電ネットワークを共通インフラとして第三者に開放し，発電•卸売部門および小売部門への新規参入を認めることを指す。この形態から，発送電分離とも呼ばれてきた。たしかに，電気事業において競争が有効に機能するためには，共通インフラとも言うべき送配電ネットワークがすべての発電·卸売部門および小売部門の事業者にとって公平に利用できることを何らかの方法で保障する必要がある。そこで送配電ネットワークを公共財として第三者に従来以上に開放することになった。垂直統合型のビジネスモデルで経営されてきた電気事業が，性格の異なる複数の事業に分化していくことになる。本稿においては，そのような変化にまつわる法的リスクと，それを受けて事業者が実施すべき対応について考えておきたい。