ゲリラ豪雨を予測して生活を守るMP-PAWR(マルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダ)

摘要

世界的な気温上昇に起因する異常気象のせいなのか，我が国でも大規模な豪雨災害のニュースが毎年のように報じられている。この数年でも，2018年の西日本豪雨，2020年の熊本豪雨などが発生しており，浸水してしまった住宅や田畑の映像などが記憶に新しい。また近年は短時間で雨雲が発生し集中的に雨が降るいわゆるゲリラ豪雨の発生も多くなってきている。2008年に発生した都賀川水難事故では，集中的に降った雨のためにわずか15分の間に川の水位が1.3 mも上昇し,子ども3名を含む計5名が亡くなっている。各地で観測されている竜巻も数分間で発生し，移動するという。このようなゲリラ豪雨や竜巻などの突発的な大気現象の被害は,短時間で急速に発達する積乱雲に伴って発生しており,早期探知や予測が社会的に強く望まれるようになっている。こうした予測には,一般に私たちに配信される地図上2次元の降雨分布の情報だけでなく，上空の降雨状況も含む3次元の情報を得ることが重要であり,高い時間分解能をもつ3次元スキャンが可能な観測システムが不可欠とされている。