乳児の言語発達メカニズムを探る~(注1): 視線追従と語彙獲得の関連

摘要

言語発達に影響を与える1つの要因として乳児期の視線追従が挙げられる。本研究では，視線追従行動を他者の視線方向を追従する能力と，視線が向けられていた物体情報を処理する能力（物体処理）に切り分け，それらの能力と語彙発達の関連性を縦断的に調査した。9ヶ月齢時に視線追従テストと物体処理テスト，18ヶ月齢時に語彙チェックリストによる獲得語彙数の測定をした。その結果，9ヶ月で他者の視線を追従し物体を長く注視していた乳児ほど，物体の情報処理が高められており，18ヶ月時で多くの語彙を獲得していた。そして，媒介分析により，視線追従と語彙獲得の関連は，物体処理能力によって説明できることを示した。重要なことに，他者の視線シフトとは関係なく単に物体を長く注視しているだけでは物体処理は高められないことがわかった。これらの結果は，視線追従は物体処理能力を介して語彙獲得を促進しているという新しい関連性を示している。本研究は，初期の視線追従から後の言語獲得に至る学習プロセスの詳細を明らかにする。