森林バイオマスの減量•低濃度化のための湿式酸化法操作条件の検討

摘要

本研究で用いる次亜塩素酸ナトリウムを用いた湿式酸化法は、操作が簡易（完全混合系で加温しながら撹拌処理し、固液分離するという単純な操作)であり、広葉樹落葉に適用した場合にセシウム収支はほぼ100%とれ、大気側にガス態でセシウムが移動しない安全な系であり、減量率と低濃度化率が50%以上を示し、かつ残渣中の有用成分の利用可能性があるなどの利点がある。その技術をオンサイト除染へと応用するためには、多様な性状のバイオマスが混在している場合の最適操作条件を知る必要がある。本研究では、調査対象地域である宮城県丸森町筆甫地区の森林エッジにある牧草地周辺をモデルサイトと位置づけ、樹林帯の樹種および樹齢などの調査を通じて処理対象落葉を選定し、その処理条件について検討した。その過程で既報と同様にセシウム収支が100%とれることを確認した。さらに操作条件について、①次亜塩素酸ナトリウムは0〜10,000 ppmの間では濃度が高いほど効果がある、②反応温度は50〜85℃の間では液量を維持できる65℃程度が最適である、という結論を得た。減量率は落葉の性状によっては既報に比べ低い値が得られた。低濃度化率はセシウム濃度が高いものにおいて既報より高い値が得られた。减量とセシウム濃度低濃度化のメカニズムを3つのプロセスで説明し、大きく硬い葉とそうでない葉の結果の違い、老木の落葉と若木の生葉の結果の違いなどを説明した。葉などのバイオマスから液相にセシウムと有機物を移行することの意義を考察するとともに、大まかな見積もりにより、本技術がオンサイト除染において量的には現実性が高いことを示した。