文献紹介

摘要

二種類の性質の異なった樹脂の混合溶液を金属面に塗装し加熱•架橋して作った塗膜が相分離して複層塗膜になる様子を，XPS•SEM•EDSを使って測定した。この方法の利点は，一回の塗装で二層構造をもつ塗膜ができる経済性と，塗り重ねた場合よりは付着性に優れることであり，ここ20年多くの研究がなされている。今回使用した樹脂の一つはテトラエトキシシランオリゴマーあるいは乾性油脂肪酸で変性したビスフエノールA型エポキシ樹脂であり，もう一方はフッ素樹脂で変性したヒドロキシ基含有アクリル樹脂である。これら二つの樹脂を50: 50混合し，メチル化メラミン樹脂あるいはポリアミドアミンを架橋剤として使用し，室温で12時間乾燥した後，120℃で1時間硬化した。膜厚は50〜80μmある。架橋反応は樹脂の分離を阻止するので結果は複雑であるが，次のようなことがわかった。フイルムと空気の接触面への分離移動にはフッ素樹脂部分が必要であり，フイルムと金属面の接触面への移動にはシロキサン部分が必要である。フッ素部分の割合•アクリル樹脂の分子量•官能基量が相分離の程度を決める。