タイヤ周り流れの数値解析と空力研究: 文献レビューと事例紹介

摘要

地球温暖化をはじめとする環境問題への関心の高まりから，自動車の排出ガス規制についても今後一層の強化と厳格化が見込まれている.特に自動車の空力設計においては，温暖化ガスのーつであるCO2排出量の低減のため，一層の空気抵抗の低減が求められることとなる.これまで多くの空力技術者の努力によって発展してきた自動車の空力技術分野では，今後さらなる発展のために,より車体細部の詳細な現象やこれまでは無視されてきたような空力影響をも考慮した技術開発が必要となりつつある.このような状況から，他性能を主眼に置いて開発されてきた車両部品についても，その車両空力への影響が注目されている.特にタイヤは，その有無によって車両全体の空気抵抗は25%変化するとも言われ，タイヤ周り流れが車両空力に与える影響に注目が集まっている.また，近年世界的に導入が進められている，新たな燃費試験法WLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)では，可能な仕樣の組合せ全てについてCO2排出量の評価が必要とされており，タイヤやホィールなど複数仕様があり得る自動車部品に関しては,その差異が車両の空気抵抗に与える影響を評価する重要性が増している.加えて，仕様数が膨大になることから，風洞法やCFDに基づく類似車両内の補間評価の活用が必要と考えられている.