文献紹介

摘要

脂肪族カルボネート化合物(PC)を主原料として使用し,1,4-ブタンジオール(BD)とジメチロールプロピオン酸(DMPA)を加えて，1,6-へキサンジイソシアネートで結合してトリエチルアミンで中和してウレタンジスパージョンを合成した。本報告では，BDとDMPAの量を変えて合成しジスパージョンの性状および塗膜性能の変化を測定した。DMPA量の変化はイオン量の変化であり，PCよりも短い分子であり水素結合の量が多くなるBDの変化はハードセグメント量の変化である。いずれの場合もジスパージョンは直鎖状ポリマーの集まりである。ジスパージョンの大きさはDMPAが多くなると小さくなり，長期の安定性はDMPAの増加とBDの減少により増加する。フィルムの膨潤•表面状態•機械的性質はBDよりもDMPAの影響が大きい。塗膜の表面はミリスケールでは滑らかであるがミクロンスケールでは滑らかではない。おのおののナノ粒子の表面を電子顕微鏡で見ると小繊維状になっていて,その状態はフィルム表面にも色濃く反映する。引っ張り強度·破壊伸び率·破壊エネルギーはBDが多くなると増大する。一方，DMPAの増加は破壊伸び率を増加させるがほかの二つは低下させる。DMPAの増加がハードセグメントの結晶化を阻害していると考えられる。