文献紹介

摘要

海浜での防錆のために鉄表面に有機塗膜が塗装される。しかし，UV光は有機塗膜を劣化させるので，防錆とUV遮蔽両方の効果をもつ化合物が必要である。酸化亜鉛ナノ粒子は広いバンドギヤップをもっていて高エネルギーのUV光を吸収する性質がある。さらに，金属から電子を受け入れる性質があり防食 能もあることが報告されている。しかしながら，海浜のような 厳しい環境ではメタクリレートポリマーと酸化亜鉛のナノコン ポジットでは付着性が十分ではなく適切な選択とは言えない。 この研究では，軟鋼鈑面に強く配位するピリジングループの存 在効果を調べた。ピリジン基をもつメチルメタクリレート(Pyridine-4-yl-methyl methacrylate)とBMAをラジカル共重合 してピリジン基をもったポリマーPoly (Py-MMA-co-BMA)を 得る。オレイン酸で修飾した酸化亜鉛存在下（2.5%)に同様 の重合をしてナノコンポジット（Poly (Py-MMA-co-BMA)/ ZnO)を得る。Poly(Py-MMA-co-BMA)/ZnO塗膜は可視領域 の光の80%を通すが，UV領域の光では50%以上吸収する。 Poly (Py-MMA-co-BMAおよびPoly (Py-MMA-co-BMA)/ZnO を軟鋼鈑に塗装し，塗装前後の塗膜の光吸収の変化を調べた。 前者は252 μmの吸収変化が激しく，ポリマー官能基と金属面 間のコンプレックスができていると思われる。一方，後者は 362〜326 μmの吸収変化が大きくナノコンポジットと金属表面 間のコンプレックスができていることがわかる。