『平和研究入門』

摘要

本書は，大阪大学で全学共通教育科目「平和の問題を考える」の教科書として，2008年の『平和の探求—暴力のない世界を目指して』を全面的に改訂して出版されたものである.正規の授業に組み込まれ，毎年100名を超える学生がおり，市民にも開かれたこの講座は，丸10年の蓄積があるという.その積み重ねの上に立つ本書の内容は，「平和」を考えるうえでの体系的な広がりをもっていると同時に，学生（読者）が，自ら考え，行動して価値観を築き，しなやかに「他者」と繋がり，共に生きていく想像力と創造力を養っていくことが期待されている.そうした点で，本書において多面的に取り上げられた19の論考における事象の「正解」はないとしながらも，平和を探求するためのガイドブックとしてまことにふさわしい好著である.