全盲とロービジョンの大学生の移動様態に関する研究: 大学キャンパスにおける事例研究

摘要

本研究で得られた知見を以下にまとめる。1）移動時に多用される参照エレメントにはスロープや足ふきマットなどがあり、前者は触感（足）で、後者は多様な感覚によって使われる。2）全盲からロービジョンへ見え方が推移するにつれ、参照エレメントは白杖や音、触覚的なものから視覚的なものへと推移する。3）環境的な問題から、何も伝わずに歩かざるを得ない状況が生じている可能性が示唆された。4）体性感覚による原寸大の環境認知と、環境を抽象的に構造化することによる対象化された環境認知が行われていることが確認された。また、全ての調査対象者が環境に慣れるに従い地図的なイメージを形成してゆくことより、移動の際は対象化しやすい環境が重要であることが示唆された。5）駅と階段で誘導ブロックが活用されていること、入口や曲がり角を示す誘導ブロックが必要とされていることが判明した。