地方都市における市街化調整区域の土地利用マネジメントに関する研究:関発許可条例と地区計画の使い分けに着目して

摘要

1．はじめに社会の成熟化に伴う開発動向の地域的多様化に備えるために、線引き制度の選択制や市街化調整区域（以下では、調整区域と略記する）における一種の規制緩和措置を盛り込んだ2000年の都市計画法改正から10年が経過しようとしている。調整区域とそこでの開発許可制度は日本の都市計画制度の中で、郊外スプロールの抑止力が最も強い手法であり、田園地域の環境保全や都市のコンパクト化を進める上で今後も維持されるべき貴重な制度だと考えられるが、他方で、開発の可否のみから調整区域の土地利用を規定するその制度の硬直性や開発規制の厳密さから、様々な問題も浮上してきている。特に地方の人口減少や経済停滞のみられる地域では、線引き都市計画区域の非線引き化の動きが見られる他、市町村合併に伴う都市計画区域の再編においても線引き都市計画区域と非線引き都市計画区域が同居する場合には、前者に統合する方向での調整が難しいとの指摘がある1）。よって、調整区域の持つ郊外スプロールの抑止力を評価し、それを積極的に維持しようとする立場に立てば、調整区域における弾力的かつ適切な土地利用コントロールのあり方を模索する必要性が生じるのである。こうしたことを踏まえ、本研究では調整区域における土地利用コントロールの弾力化に対して代表的な法定手段である開発許可条例（3411号条例注1））と地区計画制度を取り上げ、その使い分けに着目することで、特に地方都市を対象とした調整区域内の土地利用マネジメントの現状の課題や可能性を考察することを目的とする。%This paper clarifies actual condition and problems of applying methods of municipalities' ordinances about Article 34-11 about City Planning Law and District Plan by researching to municipalities which have applied both institutions simultaneously. Applying methods are divided by purposes, scale, and places of developments. As representative methods of application, there are 4 types following as: municipalities' ordinance which covers whole urbanization control areas and District Plan(DP) for designated large scale housing developments, division by places of developments, division by valuing on-site condition or purpose of DP, and division by applying various types of DP. It is a major problem that municipalities' ordinances were considered as premise rather than District Plan.