台北市における「ホームレス支援住宅」の実態に関する考察その供給ネットワークと諸アクターの役割に着目して

摘要

Homeless is a common issue in city area. In the case of Taipei city, Taiwan, Wanhua district is known as the area where most homeless gather and live. In this study, we define those private housings that are provided for ex-homeless as a next stage of temporary residence like shelter as Homeless supportive housing'. We first review the homeless policy in Taipei city and mainly focus on the supply network of these supportive housing. We also clarify the role of each actors who involved in the network including ex-homeless, social worker and house owner.%本稿はまず文献等の調査を通して、台北市のHL問題の現状と、市の関連施策を体系的にまとめた。また、本稿が定義するHL支援住宅については、現地調査、ヒアリング調査及びライフヒストリー調査により、路上から入居に至るまでの各種の経路とそれに伴う市の福祉資源の利用を明らかにした。台北巿では東京の「地域生活移行支援事業」や韓国の「単身階層向け買上賃貸住宅モデル事業」のような制度がないため、行政借り上げ型のHL支援住宅もないが、国の補助金を大元にする市が展開した「ホームレス仕事と生活再建事業」、「ホームレスシェルター、アゥトリーチサービス事業」を通して、補助金ベースで民間事業者と連携関係を築き、民間の物件に依存する傾向が強く、互いの信頼関係に基づく官民連携の性格が見てとれる。福祉士、入居者、家主等のアクターで形成されたHL支援住宅の供給ネットワークの仕組みは、アクター同士の関係性を整理することによって解明することができた。福祉士と家主は信頼関係に基づき情報共有し、入居者の受入において連携する。福祉士は入居者に対して支援、福祉資源のみならず物件の情報も提供し、入居者は家主とはある意味相利共生の関係であり、相互見守りの機能もある。HL支援住宅は市場によって淘汰された需給両側を上手くマッチングし、居住ニーズを満たされてこなかった低収入の社会的弱者向けに提供される住居で、路上生活から脱却させ、HL人数の減少に一定な効果をあげているが、全体的に十分な供給が確保されていないため、今後は入居待機者の問題が予想できる。また、HL支援住宅での生活の質は路上時代より顕著な改善はあるが、住居としての質は決して長期生活、特に体調の悪い高齢者や障害者の終の棲家として適切なものとは言えないのであろう。今後は、狭小で劣悪な住居であるHL支援住宅においての生活実態の更なる把握や、今の生活ぶりが入居者の将来の人生設計等にどのような影響がある等に関して検証をし、HL支援住宅の効果をミク口レベルでの評価を行いたい。