伝統的木造住宅の維持管理における工務店による共助に関する考察 工務店を対象としたアンケ一ト調査より

摘要

This study examined both potential and ideal approaches for cooperation of building contractors in the maintenance of traditional wooden houses. We conducted a questionnaire survey on traditional wooden houses and streetscape preservation among contractors engaged in building and carpentry within Nara Prefecture. As a result, there is widespread acceptance that traditional wood-frame houses with their traditional character must be preserved in order to maintain harmony with local landscapes, but also that these houses need to meet the requirements of the house occupants. Specifically, these efforts need to be pursued as collaborative initiatives between the occupants, local residents, specialists, and various tradesmen, with an emphasis on the quality of life of the house occupants. The survey also clearly showed that building contractors recognize that they need to collaborate in the maintenance of traditional wooden houses and also that they are willing to be involved in the effort.%伝統的な木造住宅が維持管理され、その地城で町並みを形成する 地域資源として継承されていくためには、所有者の管理だけではな く、地域の人々や専門的技術を有する各種職人、さらには公的なサ ポートなどの協同が必要であると考えられる。その可能性やあり方 を探ることを本研究の目的としている。本報では、伝統的な木造住 宅の維持管理において、専門的技術を有する大工や職人などの存在 が大きかったと考えられることから、居住者による維持管理をサボ ートするつくり手側の専門家として、県内の建設業や大工業に関わ つている業者を対象として、伝統的木造住宅および町並み保全につ いてのアンケート調査を実施した。その結果、伝統的な木造住宅を 維持保全していくためには、技術者の養成とともに材料確保、補助 金制度のあり方、見積もりの難しさへの考慮、住民の意識向上とそ れを支える地域支援や教育の充実が求められている。地域特性をも つ伝統的な木造住宅は、気象状況や地理的な地域特性のみならず、 地域の景観と調和しつつ、居住者のニーズに対応しながら継承して いくべきであると考えられている。また、居住者の生活を重視しつ つ、居住者と地域住民と専門家や各種職人との協同とともに進めら れていくことが重要であると考えられている。さらに、伝統的木造 住宅の維持管理における工務店による共助について、工務店側もそ の必要性を認識し、関わっていく意識を持っている工務店があり、 居住者の現在の生活に重点をおいた維持管理の重要性、および居住 者の管理意識を支える専門家としての役割が意識されていることが 明らかとなった。今後、伝統的木造住宅の維持管理において、住宅 の安全性や耐久性などの物理的な側面だけではなく 、居住者にとつ て住み心地の良い、現代の生活スタイルに合った住まい方を取り入 れながら、居住者と工務店による協同や連携が必要であり、さらに 地域住民も含めた共助が求められていくと考えられる。