半屋外空間の洋風化による空間特性の変化: 大正期の住宅設計競技·博覧会入選案を対象にして

摘要

戦後、住宅不足の深刻化をうけて、当時東京大学吉武研究室は、様々な日本の家屋の生活を調査し、公営住宅標準設計(1951年)へと結実させた。この標準設計とされた住宅平面を見てみると、「バノレコニー」と記述された場所がある。この屋外ではあるが、住まいに必要な空間として平面計画に取り入れられた空間は、サービスバルコニーを意図したものであって、居間や台所·食事室などの居室とは繋がっておらず、「洗濯·洗面室」からのみアクセスできる重要な空間として位置づけられていた。実施設計の際に、バルコニーと洗濯·洗面室との間に梁が現れてしまい、空間的な連続性が断たれてしまったという鈴木の述懐は、このバルコニーが住宅の集合·高層化によって失われてしまう各住戸の接地性を獲得するために付加されたものではなく、あくまで生活調査から導き出された、各住戸の生活に欠かせない空間のひとつとして計画されたということを物語つているといえる。以下、本研究では、こうしたバルコニーやベランダ、テラスあるいは縁側などと様々に称され、また、平面計画の一部に取り入れられ、何かしらの機能性を持つことが期待されている空間を[半屋外空間]として定義して論を進める。