内装木質化の保育室に関する保育者による評価: 保育室の内装木質化による保育への効果に関する研究

摘要

近年、幼稚園や保育所などの保育施設では木材の利用が増加して いる。文部科学省が平成25年度から実施している「公立学校施設 における木材利用状況に関する調査結果」では、平成28年度まで に243園の幼稚園が建設され、そのうち木造園舎が32%、非木造園 舎で内装木質化した園舎が51%であると報告されている。さらに保 育所でも木材利用を対象とした補助事業が行われていることか らも、今後も全国的に木造園舎や内装木質化された園舎が増えてい くと思われる。木材を園舎に利用することは、林業の活性化や木材 の循環、環境負荷の低減などの点から社会的な意義は高い。そして、 木材の利用は施設利用者の生活や行動に良い影響があると報告され ている。既往研究では木造·非木造という構造種で比較したもの、 内装木質化という内装材で比較したものがある。前者の構造種では、 教育学の分野で服部·橘田らが木造校舎が鉄筋コンクリート造 (以下、RC造）校舎に比べて子どもや教師の印象が良い、疲労が少な いことを明らかにした。また、建築学の分野では、山田·三浦らが、高齢者施設で木造が非木造に比べてスタッフのュニフォームや 靴の着用が少ないことを報告した。後者の内装材では岡村·伊香賀 らが、住宅で木質内装の視覚刺激影響が学習効率に影響すること を報告した。以上の研究により、高齢者施設·住宅·小学校で空間の印象·疲労度·学習·睡眠·着衣への効果が指摘されている。保 育施設においても新井·熊谷が内装制限による内装木質化の影響、 生方·伊加賀らが温熱環境·内装材の園児のィンフルェンザ感染 率への影響を報告しているが、保育面での効果はまだ明らかにされ ていない。木材を利用した園舎が増加する中で、内装木質化が保育 にもたらす効果について具体的な知見を得ていく必要がある。