変位記憶型センサによる構造モニタリングシステムの開発と実建物への適用と検証

摘要

筆者らは，地震後の構造物の健全性診断を目的として，変位記録型センサと非接触給電方式の計測装置を組み合わせたモニタリングシステムを開発し，性能確認実験を経て，実構造物へ適用した事例について報告している。東北地方太平洋冲地震の際の記録例から，開発したシステムの有効性が示されている。システム開発においては，取り扱いが容易で簡便な計測方法により，専門家でなくても現場で計測表示診断が可能であること，無電源で構造部材の変位最大値を記録することが可能なこと，記録されたデータはワイヤレス計測装置により簡便な操作によって読取ることができることなどが実現されている。開発したシステムは，20棟もの実建物へ適用され，多くの実地震の記録が得られており，長年に亘る筆者らの地道な努力と業績は賞賛されるべきである。得られた記録をもとに，建築をモニタリングする価値をさらに探求し，広く社会に伝えていくことを願う。%A simple and easy-to-use structural health monitoring system for a quick inspection of structural health just after large earthquakes is developed. The monitoring system consists of a displacement peak hold sensor and a wireless data acquisition system. The peak hold sensor is able to memorize maximum, residual, and cumulative displacement of structural deformation without any external power supply. The monitoring system has been already applied to over 20 buildings, and some of the systems verified its effectiveness at the large earthquakes, such as the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake.