歴史的建造物群に関する基礎的かつ広域的悉皆調査方法の提案: 町屋を中心とした町並みの残存状況及び外観特性を把握する手法として

摘要

The purpose of this paper is to suggest a new type of entire survey on historic buildings within a traditional town, mainly consisted of Machiya, historic merchant houses. It is intended that the result of this survey is used as a basic report for expected historic district designation and establishment of design guidelines. Notable features of this survey are as follows:1)It can be conducted within a reratively short period of time by adopting simple method. 2) Detailed analysis on facade characteristics is available.%戦後70年を迎える中で，伝統工法による木造建造物は，老朽化や相続等を理由に年々取り壊されている。歴史的町並みに対しては，伝統的建造物群保存対策調査等を通じて当該地区の歴史•文化的価値が明らかにされ，町並みを活かしたまちづくりが進められてきたが，例えば伝建調査は調査対象を厳選して当該地区の歴史•文化•社会を総合的に調査するものであるため，対象となる町並みは全国的に見れば僅かであるのが実情である。本報告は，全国規模で歴史的町並みの広域的な実態把握がなされていないこと，町屋に対する全国規模での体系的な研究が遅れていることに危機感を持ち，町屋を中心とした歴史的建造物群の残存状況と外観特性を把握するための基礎的な悉皆調査方法を提案したものである。筆者の問題意識は大変に的を得たものであり，今後，筆者らによる新潟県全域の調査が終了し，広域的な視点から新たな有用な知見が得られることが期待される。