宇品覬旋館の建築について

摘要

この報告は，1939年に広島の宇品港に竣工を見た軍関係の施設「宇 品凱旋館」の建設経緯とその施設の概要を記したものである。報告は， 主として防衛省防衛研究所所蔵の「宇品凱旋館に関する件」（陸軍省 大日記，1937年）と広島県立図書館所蔵の『宇品凱旋館竣工記念」 (宇品凱旋館建設会，1940年）に基づくものである力とりわけ関連 史料の存在が比較的新しく知られることになった前者による建設経緯 (広島県知事を会長とする宇品凱旋館建設会と軍とのやりとりや，建 設資金収集手段）に関する報告に主眼が割かれている。幸い，次の別 稿を予告されているので，兵士の歓送迎•慰労のための施設とされる 凱旋館と類似の他の諸施設（たとえば佐世保のそれ，あるいは各地の 軍人会館）との比較，赤木周三と推察された設計者に関するさらなる 考察，戦後もかなり長く存続したという凱旋館のその後の歴史等につ いても続報が望まれる。