ヒューマンファクターの視点による鉄道事故の研究

摘要

日本の鉄道は、明治5年の創業以来、多数の死傷者を伴う重大事故を数多く経験してきた。本研究では、鉄道職員の取り扱い誤り、いわゆるヒューマンエラーに起因して発生した鉄道事故に特化し、ヒューマンエラー分析手法に基づきエラーを誘発するに至った背景要因を分析した。その結果、異常時などを含む「滅多にない事象に遭遇」が最も多く認められた。そのため、異常時の中でも残余リスクがあり多くの死傷者が発生しうると考えられるトンネル火災において、対処の過程で発生するエラーをいかに防止していくかについて検討を行った。 本研究では、過去に発生した鉄道事故から得られた教訓を、現在あるいは将来における鉄道の安全に必要な施策に反映させていくために、事故データがある程度系統的に残っている昭和61年度以前の国有鉄道時代に発生した事故を対象とした。