黄金時代の軌跡第68回

摘要

九州は大陸に近いこともあり古くから開け、江戸時代鎖国期には長崎の出島がわが国唯一の貿易港として繁栄したほか、薩摩藩は明治維新の舞台になるなど、日本の政治や文化に大きな影響を与えた土地である。しかし、明治政府樹立後、鉄道の建設は意外といつていいほど遅く、1889 （明治22）年12月11日に九州鉄道の手で博多〜千歳川 （仮）間が開通するまで、九州には馬車軌道や軽便鉄道を含め、鉄道と名の付く交通機関はなかった。当時本州では官設鉄道·山陽鉄道·日本鉄道により塩釜〜姫路間のレールがつながつていたほ力、、現在の水戸線も全通。大宮〜直江津間も碓氷峠部分をのぞいて開業しており、中央本線や北陸本線、関西本線もそれぞれ新宿·米原·湊町 （現·JR難波）方の一部区間で営業がなされていた。北海道は手宮〜札幌〜幌内間が早期に開業し、四国も讃岐鉄道丸亀〜琴平間と軽便鉄道のはしりといえる762腿ゲージの伊予鉄道が鉄道地図に姿を見せていた。つまり、わが国の主要4島のなかで、こと鉄道に関しては九州が最後まで後れを取ってしまったのである。