海外旅行関連感染症

摘要

感染症の世界的な拡散の背景として,旅行,紛争,貿易などが指摘されている.なかでも海外旅行者による感染症の拡散は,2003年の重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS),2009年のパンデミックインフルエンザの事例が示すように.容易に,しかも短時間に起きうることが明らかとなった.世界の国際線航空旅客数は2003年の5億7.400万人から2013年には12億3,800万人に増加し.かってない規模で国際間をヒトが移動する時代を迎えている.わが国からの出国者も年間1,800万人,外国人入国者も1.100万人を超えるようになり.日常臨床においても,海外旅行に関連した感染症(travel-related infectious diseases)について注意を払う機会が増加していると推察される.これらの感染症のなかには,国内外における罹患率の差が大きく,旅行歴が診断の鍵となる疾患(輸入感染症)が含まれる.