工場排水試験方法(JIS K 0102)での無機イオン•環境指標項目に関する改正概要

摘要

工場排水試験方法(JIS K 0102)は環境基本法や水質汚濁防止法に係る基準値の把握をはじめ，多くの公定法に引用されており，2013年9月の改正に引き続き，2016年3月に改正が行われた。2013年9月の改正では，無機イオン•環境指標項目に関連して，以下の改正が行われた。pH(箇条番号12)では，調製pH標準液の調製はJIS Z 8802によるとして調製法の記載が削除，PCB(箇条番号27)では，JIS K 0093に規格化されていることから本JISからは削除し，27は欠番，フェノール類(箇条番号28)では，安息香酸メチルを用いる方法及び固相抽出法が追加，非イオン界面活性剤(箇条番号30.2)では，抽出溶媒としてトルエンが追加された。また，流れ分析法が28フェノール類，30.1陰イオン界面活性剤，34ふっ素化合物，38シアン化合物，42アンモニウムイオン，43亜硝酸及び硝酸イオン，45全窒素，46りん酸イオン及び全りん，65.2クロム(Ⅵ)の各項目に追加された。詳細は工業用水No.627, 50 (2014)を参照されたい。この改正は，経済産業省の委託事業「環境保全と環境競争力の強化に資する環境測定JIS体系の構築戦略事業(2007年度～2009年度)」及び「工場排水試験方法等に関するJIS開発事業(2009年度～2011年度)」(いずれも事務局は一般社団法人産業環境管理協会)に設置されたJIS K 0102改正委員会を中心として最近の分析技術の進歩，環境負荷を低減する試験方法への転換を検討し，その結果から全面的な見直しなどが行われたものである。また，試験時間の短縮や試薬 ·溶媒や廃液量の低減が図れるよう，上に記した項目の測定に流れ分析が導入された。さらに，規格全体を通して健康影響や環境負荷低減の観点より抽出溶媒のベンゼンや塩素系の有機溶媒がより毒性の低い溶媒に変更された。