多目的最適化を用いた伝送線路解析手法の提案と検証

摘要

近年，高速伝送回路の設計，開発におけるシミュレーションの重要性は増し，実測に基づく高精度な伝送線路シミュレーションが必要不可欠となっている．そこで本論文では，伝送線路の測定結果から，高精度の伝送シミュレーションを実現するための伝送線路特性を決定する手法について提案する．筆者らは，これまでに伝送線路特性から等価回路モデルを作成する手法を提案した．本論文で提案する手法と組み合わせることで，（1）伝送線路の測定（2）伝送線路特性の決定（3）等価回路モデルの作成の手順でSPICE等の回路シミュレータで実測に基づいた高精度のシミュレーションが可能になる．本論文で提案する伝送線路特性を決定する手法は，（1）実測した周波数特性，時間軸応答特性の二つを同時に用いたフィッティング，（2）多目的最適化を用いたフィッティングの二つの特徴をもつ．具体的には，周波数特性と時間軸応答特性の複数の特性を同時にフィッティングするために遺伝的アルゴリズムを用いた多目的最適化を適用する．これにより，それぞれの特性間の重み付けに伴う試行錯誤が不要となり，フィッティングが自動化される．実際にマイクロストリップ線路を用いて提案手法の検証を行った結果，周波数軸，時間軸の両方で高精度なシミュレーションが可能であることが明らかになった．