WLCGにおける国際ネットワークの重要性: LHC-ATLAS実験のためのICEPP地域解析センターの運用実績

摘要

欧州原子核研究機構(CERN)に設置されたLHC加速器は、2009年11月に陽子ビームの衝突を成功させて以降現在も順調に実験データを蓄積している。この実験データは、過去の高エネルギー実験と比較しても非常に大量であるため、世界各国の計算機施設を国際ネットワークで結んだ分散計算機網(WLCG)を使って処理される。現在ATLAS•CMS両実験においてヒッダス粒子の発見が目前に迫っているが、ヒッグス粒子発見を確定させるために不可欠なモンテカルロシミュレーシヨンも同様にWLCGの計算機資源を使って行われている。このWLCG運用における三つの柱のうち、それぞれの実験グループにおいて構築されたコンピューティングモデルと各計算機施設の運用については、既に多くの経験と実績が積み上げられてきている。しかしながら、さらに増加する実験データを迅速に処理するために、国際ネットワークの有効利用に関する技術が最近では重要視されはじめている。このような状況の中で、東京大学素粒子物理国際研究センターに設置した、ATLAS実験のための日本国内唯一の解析拠点(Tier2センター)の運用における経験をもとに、欧州各国から離れた位置にある解析拠点における国際ネットワークの重要性について紹介する。