伊能図と海・海岸・港 伊能忠敬

摘要

井上ひさしによると、「人生二山説」というのがあるらしい。つまり、定年を境に、前半でひとつの山を超え、後半でもうひとつの山を越すような生き方をすることである。寿命の延びた現代人は、いやでもこのような生き方をしないと、後半でただの厄介者になってしまうという。江戸時代後期に日本の実測地図を初めて作成した伊能忠敬は、「人生二山説」を実践した、現代人の手本のような人である。忠敬の一生をみると、隠居する49歳までは仕事に励み家業を大いに発展させ、隠居してからは全国の海岸線を17年間にわたり徒歩で測量して、日本全国の実測図を初めて完成させるという偉業を成し遂げている。