気候変動と沿岸生態系: ブルーカーボンと沿岸海洋炭素循環モデル

摘要

CO_2が地球温暖化をもたらしている原因の一つであることはよく知られています。沿岸域は河川流入などにより陸からの負荷を非常に受けやすく、CO_2濃度も高いことから、これまではCO_2を海から大気へ放出する場所であるとみなされてきました。ですが最近の研究により、海草藻類が繁茂するような植生のある沿岸域ではむしろCO_2を吸収する場所となることが分かりました。CO_2吸収後に、沿岸域に炭素が堆積する速度は、図1からその大きさがよく分かると思います。海全体で植生のある沿岸域の面積はわずか0.3%ですが、炭素堆積速度は大陸棚の約2倍、外洋の約22倍もの大きさをもっています。UNEPは沿岸域で吸収·蓄積される炭素を「ブルーカーボン」と命名し、その重要性を強調しました。日本は約35,000kmの海岸線を持ち、その長さは世界第6位です。つまりは、ブルーカーボンの量も世界的に上位に位置する可能性があるということです。では、気候変動を緩和するために港湾におけるブルカーボンを技術的に利用することはできるのでしようか。それについては、まず沿岸域の炭素循環について考える必要があります。