野蒜築港と日本一長い運河群の復興創生と地域づくり

摘要

宮城県の仙台湾には，南より阿武隈川から旧北上川までの各河川をつなぐ貞山運河•東名運河•北上運河が整備され，松島湾を通じ外洋を経由しない約44kmの日本一長い運河群による舟運航路網が形成された。この運河群は，江戸時代初頭の仙台藩の木曳堀ゃ御舟入堀の開削に始まる。明治11年から，政府は新たに北上運河を開削して政府直轄の近代港湾「野蒜港」を建設し，これに連動して宮城県は東名運河の開削や木曳堀•新堀•御舟入堀の拡幅改修に着手して同23年に完成した。さらに，山形県への関山隧道や秋田県への鬼首の新道開鑿も進められ，野蒜港は東北開発や交易の扇の要と位置づけちれた。野蒜港は明治15年に開港を見るが，わずか2年後の同17年9月の嵐で頓挫し，翌年には政府は「野蒜港」を断念する。「野蒜港」は幻の港となる。