麻痺性貝毒発生海域における甲殻類・巻貝類の毒化

摘要

麻痺性貝毒（PSP）の原因成分は，サキシトキシン（STX）とその同族体であり，ヒトに対してフグ毒と同様の作用機序で麻痺性の食中毒を引き起こす．海洋性のプランクトンのなかではAlexandrium属の渦鞭毛藻などがこの成分を産生し，これを捕食した二枚貝などのプランクトンフィーダーは毒化することが知られている．そのため，貝類に関しては可食部1g当たり4MUの毒量を超えるものを食品衛生法違反とすることが定められ，二枚貝類を中心としたモニタリングが行われてきた．しかし，近年の調査において，原因プランクトン発生海域では，二枚貝類を餌料の1つとして捕食する甲殻類や巻貝類にも毒化が認められ，国内においてもそのような生物に対する麻痺性貝毒の基準値が設定されるに至っている．