鉄鋼業でのプロセス研究開発を通じて

摘要

近年、海外鉄鋼メーカーとの競争の激化や良質資源の枯渴、高騰する原料などを含むエネルギー安全保障などの問題が顕在化する中、日本の鉄鋼メーカーの地位を維持し、持続的に成長させていくためには、低品位の原料の利用拡大や鉄鋼材料の機能発現に欠かせない添加合金元素の使用量削減•代替元素開発などが求められている。さらに、地球環境問題への取り組みについては、従来にも増して、省資源•省エネルギー型で環境負荷の少ない製鉄プロセスの実現が急務である。日本の鉄鋼生産におけるエネルギー原単位は、これまでの二度の石油危機を乗り越えたことにより、世界最小レベルではあるが、現在でも比較的低温の排熱は利用されず放散されている物が多い。このような排熱の利用法を見出し、より省エネルギー型の製造プロセスの開発が望まれている。このように、鉄鋼プロセスの開発に求められるニーズは、鉄鋼製品を低コストで製造可能とする新プロセス技術の開発と、より一層の省エネルギー型プロセスの開発だと考えられる。本稿では、著者らがこれまでに取り組んだTMCP(Thermomechanical control process)技術、省エネルギー技術の研究開発事例を紹介する。